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YOKU STUDIO的既存のキャリア論の考察 <プロティアン・キャリア編>


「YOKU STUDIOの視点で新時代のキャリア観を考える」の第5回です。

前回は内的キャリアにも外的キャリアにも寄らない新たなキャリア論として「プランドハプンスタンス理論」をご紹介しました。今回は近年注目されている「プロティアン・キャリア理論」について考えていきます。


・「プロティアン・キャリア理論」とは




「プロティアン・キャリア」とは、米ボストン大学経営大学院のダグラス・ホール教授によって1976年に提唱された概念です。


「プロティアン」の語源はギリシャ神話に登場する、竜や獅子など、自らの姿を変幻自在に変えることができるプロテウス神に由来します。


お気づきのように、この理論も提唱された当時の日本はまだ終身雇用制が主流でしたから、このキャリア論が表に出ることはありませんでした。


しかし、終身雇用制度があてにできなくなる一方で、年金受給年齢が引き上がる今、経済や社会環境の変化に応じて自身を変幻自在に変化させ、順応していくとした、組織に依存しない新しいキャリアモデルとして近年注目されています。



ダグラス・ホールは心理的成功こそキャリアの最終目標であるとし、キャリアを次のように定義しています。



 


1. キャリアとは成功や失敗を意味するものではなく、早い遅いでもない。

2. キャリアは歩んでいる本人によって評価されるものである。

3. 主観的なキャリアと客観的なキャリア双方を考慮する必要がある。

4. キャリアとはプロセスであり、仕事に関する経験の連続である。


 


そしてプロティアン・キャリアとは、従来の組織によって形成されるものではなく、組織から与えられるものではない、キャリアを営む本人が成功と思えるキャリアを自ら柔軟に構築していくこととしています。


組織にいながらも組織の評価に左右されない自分軸を持ち、与えられた目の前の仕事は”経験”として全力で取り組む。


自分の軸を持ちつつも、組織目線に偏らず、客観的な視点を持ち続ける。併せてキャリアは他者との関係性の中で互いに学び合うことで形成されていくことから、異業種等といった所属する組織以外にも居場所を持ち、常にアンテナを張る。


そうすることで得た情報や新たな価値観の発見から、自身のキャリアチェンジのきっかけになる可能性もあります。


大手企業でも副業を許可するところが増えていますから、副業・起業も期待できると言われています。





・「プロティアン・キャリア理論」の問題点




まさに現代ならではのキャリア論だと思います。


前回のプランドハプンスタンス理論と共通する点は、予期せぬ出来事や社会の変化に順応する為には、常に前向きに捉え、挑戦・行動し続けるということです。


プランドハプンスタンスが、ハプニングが起きた時にどう対応するかといった「受動的なもの」であるのに対し、プロティアン・キャリアは、社会の変化を読みながら、状況に合わせて積極的に自ら変化を起こしていくとした「能動的」なものです。


 しかし、前回の記事でも触れましたが、人はそれほど柔軟でもなければ強くもありません。


プロティアン・キャリアは個人的にはプランドハプンスタンスより更に強い、「自律する人/自律しない人の二極化」といったメッセージ性を感じるのです。





・「私」のキャリア、「私たち」のキャリア




ここまで4回にわたり4つのキャリア論をご紹介してきました。


私がキャリア・カウンセリングという仕事を知ったのは、ちょうど平成不況の真っ只中、社会全体に閉塞感が漂っていた頃でした。


それまで「キャリア」という言葉は、ホワイトカラー、その中でも特別なエリートに限定されていました。


キャリア・カウンセリングを一つの学問として学び、「キャリアとは特定の選ばれた誰かに与えられる特権ではない。その人の人生そのもの」であることを知った時は、大いに好奇心を刺激され、この不穏な状況を打破する一つの道筋が見えた気がして興奮したものです。


この学問はすべての人に享受されるものであり、多くの人の希望に繋がるものと信じて、得た知識をカウンセリングの場で提供したいと思っていました。



ですが社会を支える人たちは、転職エージェントを利用するような積極的な人ばかりではありません。


私がこの11年間対面してきた人たちの職種は様々です。製造系や建築系といった職人気質の人も多く、その方々を通じて知る世界は知らないことばかりでした。


その他には病気や障害で働くことが制限される人、生活に困窮している人、言葉や文化の壁がある外国人などといった事情のある人とも対面してきました。


何事も教科書通りの結果が得られるわけではありません。傾聴を主軸としながら相談者と対峙し、互いの落としどころを探るという、地道な作業の繰り返しでした。



以上のこれまでの相談実績を踏まえて、キャリア論を再考してみました。


誤解や批判を恐れずに言うならば、「前向きで、きれいな言葉で綴られたキャリア論は理想的ではあるけれど、必ずしもすべての人に実践可能とは言い難い」というものです。


お気に入りのキャリア論を読めば、その瞬間は「そうだ!その通りだ!早速実践だ!」とモチベーションが上がるかもしれませんが、たいていの人はそれだけで満足してしまい、結局何も変わることはありません。


書店でタイトルを少し変えただけの自己啓発本が売れ続けているのがその証拠です。それは本を読んだだけでは知識として「知る」だけで、「自分の人生」として実感をもって自分の中に落とし込めていないからなのです。 


望むすべての人たちの積み重ねたキャリアが、豊かで彩りあふれたものであるように。


次回からYOKU STUDIOが目指す実践可能なキャリアについて提案していきたいと思います。





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