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YOKU STUDIOの視点で新時代のキャリア観を考える
キャリアコラム2回目。YOKU STUDIOが目指すキャリアとは、内的キャリア(自分軸)/外的キャリア(他人軸)という分離した価値観を統合し、新たな価値観を獲得していくこと。
今回は既存のキャリア論を、現役キャリアカウンセラーが実際現場で感じたことも含め解説しながら、YOKU STUDIOとしてどのようにキャリアカウンセリングを提供していけるかを5回に分けて探っていきます。今回はその第1回です。
・キャリアカウンセリングの起源
キャリアカウンセリングの起源は1900年代アメリカと古く、その背景には南北戦争があります。戦後、経済国家再建に向け労働力不足が起こり、労働力確保の為、就労経験の浅い若者への職業訓練の付与や社会的弱者の救済するための社会運動から始まりました。
最初は生きる為の生理的欲求や生活の安定が優先されてきましたが、物質的な欲求が満たされるようになると、次第に発達心理学や社会心理学等、様々な分野で精神的欲求を満たす事に着目したキャリア論が展開されていきます。
どの理論も時代の流れとともに、自身を取り巻く環境や立場の影響はあれど、基本的には「自己決定」と「自己責任」が基本原則として組み込まれるようになり、日本でもリーマンショック以降、それまでの「組織との共生」といった保守的な考え方から、徹底した「個人主導」(内的キャリア)が提言されるようになりました。
・昨今のキャリア観における自分軸/他人軸
私たちが「キャリア」について意識する時、それは主に在学中の就活や転職活動、結婚や出産、介護等における家族構成やライフスタイルの変化、そして定年のタイミングがほとんどだと思います。
今でこそ「自己肯定感」や「自分軸」といった言葉が市民権を得て、一見「自分が在りたい在り方」「自分がなりたい自分」を選べる時代になったような錯覚を覚えます。
日頃から常に自分のキャリアについて模索しているのであれば、積極的に「自分が在りたい在り方」を体現できるかもしれません。しかしそのような人はごく少数で、多くはライフイベントを目の当たりにした時に「キャリア」ついて考え始め、結局は「“自己決定”したかのように見えて、環境から決定される在り方」を選ばざる得ないというのが実際のところだと思います。
特に注目されやすいライフイベントは結婚・出産や親の介護で、男性であれ女性であれ、個人だけの問題ではありません。中小企業では残念ながら産休・育児休暇、介護休暇制度が充分とは言い難いですし、表向きは制度が整っていたとしても、男性の育児休暇は未だ周囲の理解が得られず、育児に参加したいと思っても、会社での立場や出世に影響すると考え、育児休暇を諦める人も多いです。女性では出産後の育児に関する家族や職場内のサポート体制や保育園等の社会資源が充分に得られないまま、本意ではない形で雇用形態を正社員からパートに切り替える、または退職に至るケースも少なくありません。
どのような選択であれ、最終的に本人が決断したとしても、周囲と意思疎通が取れないままであれば自己犠牲感が拭えず、自己決定というよりは環境に影響された「他人軸」による意思決定に近い形になります。
また、「自分軸」というのも時によっては考えもので、当人は“自己決定”に満足したとしても、本人の独りよがりで周囲は置いてけぼり、周囲との軋轢を生みだすケースもあります(「自己決定」と「自己責任」は対ですから、自分の決定が周囲との調和を乱したとしても、それも含めて「自己責任」なのです)。
以前、私が担当したケースでは、まだ教育にお金がかかるお子さんのいるご家庭のご主人が、兼ねてからの夢であったラーメン屋を実現させるために脱サラ、事業は軌道に乗ったものの、ご家族と家族の将来を含めた充分な話し合いをしていなかった為、次第に家族仲が冷え込み、離婚まで話が進んでしまったということもありました。
自分軸である内的キャリアと他人軸である外的キャリア。それが前向きな決断であろうとなかろうと、自分だけが納得すればいいわけではありません。その態度こそ自分本位であり、結局は自分はおろか、誰一人幸せになれないのです。自分と他者が相互に作用し合い調和すれば、更なる豊かさを手にする可能性が高まるはず。それが本来の望ましいキャリアの在り方なのです。
・これからの時代のキャリア
時代は“土の時代(物質)”から“風の時代(精神)”へ移行したと言われています。
すべての生き物は個(自分)の生命を維持すること、その次に身体的に安全であること、健康であることを自然な欲求として持ちます。そして人間に至っては、更に経済的な安定を求めます。キャリアの起源から見ても、物質的な豊かさや生産性、安定を求めたことが見て取れます。
物質がない時代、先人たちが築き上げてきた歴史があるからこそ、現在を生きる私たちは物質的な豊かさを手にすることができました。その歴史が分かれば、個が生き延びる為、あるいは大切な人を守る為、無意識であったとしても個を押し殺し、外的キャリアに依存し、物質的な価値観が優先されたのも頷けます。そして豊かさを手にした今、その抑圧された反動で“個”を取り戻そうと自分軸や自分探しといった言葉がもてはやされているような気がします。ですが私はそれが悪いとは思いません。成長の過程において、自分が今何を感じ、何処に位置しているかを確認しなければ、本当の意味で人は成長できないと考えているからです。
ただ、内的キャリアだけでも外的キャリアだけでも充分ではないことに皆、気付き始めているのではないでしょうか。土から風へ移行し、フェーズが変わった今、双方に偏らない新たな価値観の構築が望まれます。
次回は代表的なキャリア論から筆者が特に気になる3つを選び、YOKU STUDIOの視点で検証しながら、その新たな道を探ります。