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他人軸的観光の危険性と可能性
こんにちは。YOKU STUDIO的観光を考える「欲、観光しよう」担当者のSです。前回記事を読んでくださった皆さま、ありがとうございました。
今回は、前回の他人軸的観光、自分軸的観光の内容をふまえ、他人軸的観光の長所と短所についてお話していきます。
他人軸的観光とは
まずは前回の復習として、「他人軸的観光とは何か」から振り返っていきます。私が連載している本マガジンにおいて、他人軸的観光とは、下記の旅を代表とする誰かのフィルターを通した観光です。
・フォトジェニックな旅 ・観光名所 ・ガイド ・パッケージツアー
もちろん、うまく取り入れれば、私たちの旅をより彩り豊かにしてくれる旅の方法です。しかし、極度にこれらの旅の手法を取り入れてしまうと、自分の価値観や感性を活かした旅が出来ないという短所があります。また、自分の旅の満足度の限界だけではなく、時には同じ観光客やその旅先に住む現地の人への迷惑行為につながってしまうこともあります。
今回は、その内容を一部事例をふまえて紹介していきます。
他人軸的観光による刹那的消費活動の促進
現在、流行しているSNSでの発信や写真映えを追及する旅に、極度に偏ってしまった場合として、他人軸的観光の短所を紹介していきます。
SNSの普及により、誰もが自分のことを発信できるようになった現在。日々、旅に関する発信をするアカウントや投稿が、非常に多く見受けられます。
そして、フォトジェニックな写真を見て、自分もここに行ってみたいという欲望が生まれ、誰かが写っていた場所で誰かの代わりの自分を写す。そんなトレンドがあるように感じます。
これから2つの具体的な事例を紹介していきます。
・観光客殺到による地元民への被害
まず、宗教施設への観光を例にとってみましょう。日本は無宗教国家とされており、宗教の問題が身近な人は、あまり多くありません。さらに、私たちの日常生活の中でお祈りをしたり、ミサに行ったりするような行為を継続している人口は、欧米諸国やイスラム圏に比べて、少ない傾向にあります。
しかしそれゆえ、宗教の理解が乏しい観光客が、海外や国内の宗教施設で配慮の欠けた行為をし、問題となることがあります。
国内外問わず日本でもあまり普及していない宗教の施設に着目してみましょう。
私たちにとって身近ではない宗教の施設では、私たちと異なる宗教観を持つ人々が、心を込めてお祈りをしていたり、聖典を読んでいたりと神聖な時間を過ごしています。そして、もともとそのような信仰する人々によって、宗教施設は愛されてきました。
しかし、最近では装飾の美しさや写真映えなどに気を取られ、撮影マナーを軽視し、長い歴史の中でその施設を使用してきた人々の日常を壊しかねない状況を目にすることもあります。
さらには、そのように撮影した写真が、またSNSで拡散されていく負の連鎖があります。旅先のまちに住む人々の安らぎの場となっていた場所が、オーバーツーリズム(観光公害)へと繋がってしまう恐れもあるのです。
日本人にとっても他人事ではなく、鎌倉や京都などに観光客があふれ、そのまちに住む人たちの移動に支障をきたすなどの問題が起きています。
・テーマパークでの迷惑行為によるエンターテイメントの死
日本には、観光地の一つとして、自然や文化的施設の他にも、遊園地やテーマパークがあります。テーマパーク内に住んでいる人がいなくても、過度な他人軸的観光への執着は、他の観光客への迷惑行為につながることがあります。
実際に日本国内のテーマパークでも、世界観を演出するために設置されていた施設が、写真映えを求めた観光客によって、写真撮影の小道具として使われたことがあります。だんだんと行為はエスカレートし、禁止事項として書かれていた、上にのぼるなどの行為が見受けられました。その結果、世界観を演出するために設置されていた施設が、撤去されてしまったことがあります。
ただ、テーマパークに遊びに来てくれたゲストを楽しませるために設置されていた施設が、数人のマナーを守れない観光客によって、撤去されてしまうのは、遊びに来た観光客もテーマパークの運営側も非常に不本意な事態であったことが汲み取れます。
このように、あまりにも他人軸的観光に偏った観光の仕方をしてしまうと、旅先の地元の方々や同じ観光客の迷惑になってしまい、最悪の場合二度と同じような観光ができなくなってしまう結果につながります。
他人軸的観光による観光の多角化
これまで、過度な他人軸的観光がはらむ危険性について述べてきました。しかし、他人軸的観光をうまく取り入れることができた場合、私たち観光客の旅は、自分一人では気づけなかった土地の魅力に迫ることができます。
・ガイドツアーによる旅先の案内
旅先が自然の中でも、文化にかかわる場所でも、私たちにとって非日常の空間が広がっていることには変わりありません。外から来た観光客が、手っ取り早くその地について理解を深められる方法がガイドツアーです。
自然の中でも、どこにどんな植物が自生しているか、どの時間帯にどんな生き物が出てくるのか、それぞれの生き物にどんな特徴があるか。そういったことに詳しいのは、高頻度でその地を紹介しているツアーガイドです。
また、文化的施設の中でも、その施設はどのような経緯で作られたのか、場合によっては衰退したのか。その文化と現在の土地や住人との結びつきなど、そういったことに詳しいのもツアーガイドです。
私たち観光客が、ネット上や本で調べられることには限りがあります。そんなときに、実際に私たちが足を運ぶタイミングで実感を得つつ、その地域についてより長い目で見てきた誰かの説明があると、自分の滞在時間、感性だけでは気づけなかった部分にも着目できるチャンスが作れます。そのような観点から、ガイドツアーによる観光は非常に有意義なものになりえます。
まとめ
今回は、他人軸的観光について述べてきましたが、いかがだったでしょうか。もちろん他人軸的観光だけではなく、自分軸的観光も同様に偏りすぎたものは、もっと素敵な旅にできるにもかかわらず、その限界値を早めに迎えてしまうリスクをはらんでいます。
どちらの軸にも振れすぎない、どちらの軸もうまく利用した「誰かの日常をおすそ分けしてもらう旅」で、ありのままの旅先を等身大の自分で楽しんでいきましょう。
次回は、自分軸的観光の短所と長所について、ご紹介する予定です。