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「統合」ってこういうことかも?名曲6選 〜 前編/Perfume, Calm, 大森靖子 〜
これまでシリーズで考えてきた、スピリチュアル的「統合」。
それは、相手を「自分とは違う人」あるいは「敵」と見なして、妥協点を探ることではなく。
発想を転換して、その「分離」的なジャッジ自体を手放し、相手をまるごと受容してしまうことでした。
そこで、シリーズの総まとめとして、「統合」の本質を表現しているかも?という名曲をピックアップしました。
周囲にも意見を聞きながら選曲したのですが、なかなか絞りきれず、結局6曲になってしまい…笑
今回はまず前編として、女性ボーカルの楽曲3つを紹介します!
音楽を通して、「統合」の感覚を体感していただけたら、とても嬉しいです。
・Perfume「ナチュラルに恋して」(2010)
長年にわたって第一線で活躍し続けるアイドルグループ・Perfume。
彼女たちのパフォーマンスは言うまでもないですが、プロデューサーの中田ヤスタカによるサウンド、そしてその詞も大きな魅力だと思っています。
今回取り上げるのは、「ナチュラルに恋して」です!
女の子の、恋人との日常を描いた可愛らしい曲ですが、この2人の関係性には、「統合」のヒントがたくさんあります。
ぜんぜん がんばってくれない 今日は 記念の日なのに テレビを見て 時計の針は進む 急がしそうにしている キミの携帯電話 ちょっと誰から メール届いているの
パートナーが、自分の期待に応えてくれないとか、他の人とやりとりしていて不安が募るとか。
そうすると、相手のことがだんだん「敵」に見えてきて…
「私のこと全然理解してくれない!」などと気持ちをぶつけてしまい、喧嘩に発展することって、あるあるだと思います。
しかし、この曲の主人公は、そこで「キミ」を「敵」と見なして、対立することはしないんです。
キミは人気者だし 不安にもなるけれど そうやって 笑うたび 安心しちゃうの
彼女は、「キミ」の笑顔とか、一緒に過ごす楽しい時間とか、自分にとって心地いい部分に意識を向けます。
そうすることで、リラックスして「キミ」と寄り添うことができているんですね。
ここで重要なのは、彼女が決して「無理をしていない」こと。自分の気持ちを犠牲にして「キミ」に合わせているわけではないんです。
たとえば2番の歌詞。
キミの好きそうな映画 がんばって横で観るけど ちょっと 眠たい 肩を借りて眠る
すごくかわいくないですか?笑 個人的に好きな部分です。
彼女は「キミ」の趣味に合わせようと、嫌われないようにしようと、常に頑張って過ごしているわけではないことが、ここから読み取れます。
つまり、彼女と「キミ」の関係は、限りなくストレスフリー。
ナチュラルに恋して ナチュラルにキスをしてよ ねえ ナチュラルに愛して このまま手をつないでたいの ナチュラルに恋して ナチュラルに肩を寄せあって ナチュラルに愛して 何気ない 気持ちがいちばんのほんもの
相手の性質や好みなどを否定せずに認め、その一方で自分のことも同じように大切しながら、自然体で寄り添うこと。
それがこの2人の「ナチュラル」な恋であり、愛であり。
「敵」/「味方」というジャッジや、自他の境界を超えた「統合」の形なんじゃないかな、と思うのです。
(ちなみに、「ナチュラルに恋して」は「不機嫌なガール」のカップリング曲で、この2曲は対になっているとされます。
「不機嫌なガール」で描かれている恋の苦しみは、まさに「分離」による苦しみなので、その点でも対照的な楽曲になっています。)
・Calm "Sunday Sun"(2007)
チルアウト・ミュージックの先駆者とされるCalm。
ボーカルにEGO-WRAPPIN'の中納良恵を迎えた "Sunday Sun" は、2007年発売のアルバム "Blue Planet" に収録されています。
キラキラとした朝の光のなかにいるような、まさに「癒し!」といった雰囲気の美しい楽曲。
でもそこには、単なる(「光」と「闇」の区別を前提とする)理想論には陥らない、「統合」を見すえた力強さが表現されているように思います。
注目したいのは、2番の歌詞です。
試してごらん 楽しいことと 辛いことのどちらも 子供のように 母なる大地が教えてくれる 大人になれば 忘れてしまう 大切な何かさえ もう一度 取り戻すことできると信じる 今は
ここで歌われているのは、「母なる大地」から与えられるのは「楽しいことと 辛いこと」の両方がある、ということです。
私たちは「大人」になると、世界を自分なりの見方で判断しようとしがちですよね。
これは楽しい、苦しい、あるいは、これは正しい、これは間違っている…といったような、価値判断です。
しかし、はじめて大地を駆け回る「子供」のような視点に立てば。
その「楽しいことも辛いこと」も、どちらも同じように未知なるものであり、大切なものとして、そこに優劣をつけることなく受け入れることができるのかもしれません。
Sunday Sun これから始まる 新しい未来 真実を語ろう 少しの言葉で Sunday Sun 遠い記憶呼び覚ますように 新しい朝 祈りを捧げて もう一度 がんばれますように
太陽の光のなかで、主人公が取り戻すのは、いろいろなジャッジを取り払った自由な感性。
その自由な感性で世界を向き合うと、すべてが「新しい未来」、「新しい朝」の種として、新鮮なものに見えてきて、生への活力がわいてきます。
ここで「少しの言葉」しか必要とされないのは、きっとそれまで彼女が縛られていた、様々な(社会的・理性的・常識的な)価値判断から解き放たれたから、なのだと思います。
この曲が持っているような、陽だまりのような、じんわりと暖かい安心感と高揚感、多幸感こそ、二元論を乗り越えた「統合」の感覚なのではないでしょうか?
・大森靖子「アナログシンコペーション」(2017)
3曲目として紹介するのは、超歌手・大森靖子が2017年に発表したアルバム "kitixxxgaia"に収録された楽曲、「アナログシンコペーション」。
彼女の書く歌詞はとても分析しがいがありますし、私はこの曲、本当に大好きでして…
これをテーマに論考を一本書けてしまうくらいなのですが、今回は簡潔に笑
取り上げるのは、終盤のCメロ以降です。
あなたとの違いを許せずに 向き合うことに疲れたなら 同じあの光のなかで同じ夢と向き合って それぞれ音を鳴らそう 混沌から未来を絞り出す どでかいひみつきち
ここで歌われているテーマは、まさに「統合」だと言えます。
私たちが誰かを「敵」と見なして対立してしまい、そのために傷つくことになるのは、まさに「あなたとの違いを許せずに」いた結果ですよね。
でももしここで、発想を転換し。
自分と相手との関係性を、それぞれ自立しながらも「同じあの光のなかで 同じ夢と向き合う」ことのできる、つまりは両者にとって心地いい状態で共存していくことのできる関係性だと見なせれば。
そこから新たな未来を、自然に紡いでいくことができるはずなのです。
重要なのは、ここで言われている、共存の場としての「あの光」は、「混沌」とイコールなものとして読めること。
つまりそれは、「光」と「闇」が区別された状態ではなくて、もう「光」と「闇」というジャッジすら必要のないような、ごちゃごちゃのカオスそのものなのです。
(この考え方は、本作の歌詞にも登場し、アルバムのタイトルでもある「キチガイア」という言葉からも読み取ることができます。
大森靖子がこのような強い印象を残す造語を編み出したのは、「様々な差別や価値判断を超えた源」としてのカオスを表現するためだったのではないでしょうか。)
Hey Joy, ur my friend 平常に生きてる 少女は掌握してる 嫉妬してる 透明衝動
世間的に「平常」と見なされる状態を目指して、一生懸命努力したり。
相手を掌握しようとしたり、思い通りにならず嫉妬してしまったり。
そのような自分の価値判断にとらわれた行動は、自他にとっての強いストレスになります。
なぜなら、そこから生じる対立は、お互いを傷つける結果になったり、あるいは相手に迎合する自己犠牲的なふるまい(つまり自分を無化する「透明衝動」)を生んでしまうからです。
未来都市線 二本の飛行機雲重ね
キチガイア アナログシンコペーション
個性を重ねてよ アナログシンコペーション
キラキラ
しかし、お互いの存在を、同じように認め合い、重ね合うことができれば。
自分なりのリズムをさらに心地よく、面白くしてくれるものとして、自分のそれとは異なる相手のリズムを迎え入れ、オリジナルのセッションを創っていければ。
お互いの関係性から生じるリズムの変化=「シンコペーション」自体が、キラキラと輝き出すはずです。
自分と相手のリズムを同一化するために足掻くのではなく、シンコペーションをリラックスして楽しみ続け、お互いのセッションそのものを一つの曲、つまり大きな一つの世界へと変えていく姿勢。
それこそまさに、本当の「統合」だと言えるのではないかと思います。
いかがでしたでしょうか?
「統合」ってこういうことかも?名曲6選、次回は後編!
男性ボーカルの楽曲3つをご紹介します。お楽しみに!